スポーツ料理研究家・村野明子さんの思ひでごはん~美味しい+美味しい=美味しいの法則~
2023.07.24
『口内調味』って言葉を知っていますか?
意味合いとしては、噛むことで生まれる味の変化を口の中で楽しむ、みたいな。
この単語には耳馴染みがなくても、知らず知らずのうちに口内調味をしていた経験はあるはずです。ご飯を口に運んだものの、味が物足りないからすぐにおかずを食べて口の中で味を掛け合わせる、みたいな。要するに食べたものを口内で調理する、といえば想像しやすいでしょうか?
実は私は、これを今まで「美味しい+美味しい=美味しいの法則」と呼んでいました。
読んで字の如く、美味しいものと、美味しいものを足したら、絶対に美味しくなるよね! ってか不味くなるわけがないでしょ! という、至って単純な法則です。料理にまつわる取材を受けた際に、それを説明しようと「ほら、口の中で美味しいものと、美味しいものを…」と説明していたら、『口内調味』というなんともカッコいい表現を教えていただいたので得意げに使ってみました(笑)。
ちなみに、そんなふうに、ごはんとおかず…ともすればもう1品を口の中で混ぜて食べるのは、日本人特有の食文化だと聞いたことがあります。
口の中で混ぜなくとも、ごはんの上にお漬物を乗せて一緒に口の中に入れる、とか、醤油をつけた焼海苔を巻いて食べるとか。あるいは、それが口の中に残っているうちにさらに卵焼きを食べて味変を楽しむ、みたいな経験をしたことがある人は多いんじゃないかと思います。
前置きが長くなりましたが、何を言いたいのかというと
「美味しい+美味しい=美味しいの法則」は料理を考える上で、とても役に立つということです。
前の日に作ったおかずが残ってしまった時、それを温め直して翌日に出したという経験は誰にでもあるはずですが、同時に、子供たちに「え〜。また、それ〜」とテンション低めでツッコまれ、「黙って食べる!」と強めの圧で睨みを効かせて乗り切ったことがあるお母さんも多いのではないでしょうか。
かくいう私も、そんな経験をしてきた一人。そして、それを繰り返すうちに、余り物と何かを掛け合わせて、味付けをアレンジし違うおかずにして出す、的な技を身につけました。
コールスローとキノコのソテーが余ったら、二つを合わせてキノコのマリネっぽく仕上げ、何食わぬ顔をして出すとか。余ったお肉やデリは細かく切ってスープに入れちゃって、昨日食べたお肉とは違うんだぞ、的な雰囲気を出しながら食材を無駄なく使い切るとか。
それぞれが美味しい料理なら、合わせても決して不味くはならない! 口の中で合わさって美味しいと感じるものは、料理で合わせても美味しい! というのが私の持論です。
これは出来上がったおかずに限らず、食材にも言えること。
豚しゃぶを食べている時に添えられていたとうもろこしを口の中で合わせて美味しい、となれば「豚肉ととうもろこしを炒めても美味しいんじゃないか?」とか。そこから派生して「最近、夏野菜がたくさん届いたから、とうもろこしだけじゃなくて、全部まとめて夏仕様の豚しゃぶにしたらいいんじゃないか」とか。
今回のレシピで紹介した『夏野菜の豚冷しゃぶ』もそんな流れから思いついた料理です。
茹でた豚肉の上に、湯がいて実の部分を削ぎ切りにしたとうもろこし、薄切りにして水にさらした新玉ねぎやパプリカのほかお好みで、レタスやきゅうり、ゴーヤ、薄切りにしたトマトなどの野菜たちを添えれば、見た目も鮮やかで涼しげな一品が出来上がります。細かく切った豆腐を入れても美味しいです。
味付けは、ポン酢にすりごまをたっぷり入れ、『生にこだわったパルメザン』をあわせたポン酢仕立てのチーズドレッシングにしました。
私の場合、料理をワンプレートで出すことがほとんどのため、水っぽいドレッシングがご飯や他のおかずの方に流れてしまうという悲劇を生まないよう、シャバシャバしたドレッシングには必ず何かを足して料理の上にしっかりとどまってくれるように工夫します。
例えば今回使った胡麻はとても便利だし、ベビーチーズやスライスチーズをみじん切りにして投入するのもよくやる裏技。全ての調味料を一緒にジューサーにかければ粘り気のあるドレッシングが出来上がります。
もちろん、忙しくてドレッシングを作っている暇がない時は、冷蔵庫にある市販のサラダ用ドレッシングやポン酢、白だしなどでも十分です。
そこに、味の『尖り感』を出したいなら、唐辛子だとか七味、ブラックペッパー、柚子胡椒、生姜といったアクセントになりそうな調味料を足すとか、ガッツリ味が好きな男の子向けにニンニクや胡麻油、ラー油など強めの調味料を加えてパンチを効かせるとか。
一手間加えるだけで、単に市販のドレッシングじゃないぞ、感も漂います。気がつけば賞味期限が切れていたなんてことに陥りがちなドレッシングたちも無駄なく使い切れます!
これもある意味、「美味しい+美味しい=美味しいの法則」と同じこと。単体でも美味しい調味料は、合体させても美味しいのでご安心を。もしも、なんとも言えない味に仕上がったら「初めて出会った味でしょ!」と爽やかな笑顔で凌ぎましょう。
ー村野明子さんの思ひでレシピ

冷蔵庫の中にある調味料で、オリジナルのごまだれが完成☆具材に直接「生にこだわったパルメザン」を追いチーズすれば、コクがアップします!
詳しいレシピはこちら▼
レシピ詳細 | 夏野菜の豚しゃぶ チーズごまだれ添え | Rokko Butter Co.,Ltd. (qbb.co.jp)
<柴田麗/管理栄養士からのアドバイス>
●夏野菜
夏野菜には、トマト、きゅうり、ナス、ズッキーニなどがあります。中でも緑黄色野菜に分類されるトマトは、免疫機能の維持や抗酸化作用の働きをする、ビタミンA、Cが豊富に含まれています。同時に、トマトの赤色はリコピンと呼ばれる強い抗酸化作用を持っているため、体内の細胞を守る働きをしてくれます。リコピンは加熱調理により体内に吸収されやすくなります。
●旬のお野菜を選ぶメリット
季節に合わせて旬の野菜を選ぶメリットの1つに、栄養面でのメリットが挙げれられます。旬の野菜はビタミンなどの含有量などが高くなる傾向にあるので、より多くの栄養素摂取が期待できます。また、旬の物は市場に多く流通するため、価格が安くなることも多いです。旬の野菜は季節ごとに変わるため、食卓に彩とバリエーションが増えることにもつながります。