スポーツ料理研究家・村野明子さんの思ひでごはん~みんな大好き、アツアツの『から揚げ』~

2023.04.28

スポーツ料理研究家の村野明子です。


今月からコラムをスタートすることになりました。

過去にJリーグクラブの寮母を務めた経験をもとに、あるいは現在の仕事を通して日々感じていることやお料理についての話を思いつくままに綴っていこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 

さて、春のポカポカとした暖かい太陽が嬉しい季節になりました。

ついこの前まで、寒さに身を縮めて歩いていたのに、暖かくなった途端、なぜか背筋が伸びて歩く姿勢まで変わり、鼻歌なんか歌っちゃったりして完全に浮かれています(笑)。

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4月と聞けば、入学式や入社式、お花見などを連想する方も多いと思いますが、私は新たな環境で寮生活を始めるユースチーム(高校生)の選手とのさまざまな出会いを思い出します。


初めて親元を離れ、寮生活に胸躍らせている反面、どこか落ち着かない表情をしていたり、心細そうだったり、先輩の顔色を伺っていたり。

食事の時間にダイニングルームに現れるのも必ず仲間と連れ立って、というのもこの時期ならでは。数ヶ月もすれば、自分のタイミングでやってくるようになりますし、なんなら先輩たちにも学んで少し時間をずらしてきた方が混まないし、作る人も助かるよね」ということに気づいてくれたりもしますが、この時期は、決まって1年生全員でまとまってくるので、私たち寮母もてんやわんや。

ただ、その経験のおかげで今や「何人でも、まとめてかかってこいやぁ〜!」と思えるようになったと考えれば、何事も経験というのは多くの学びにつながる素晴らしいものだなって思います。

 

 そんなふうに大人数のご飯を作るのに血眼になりながらも実はこの時期は、テーブルで食事をする選手たち一人一人に目を配り、それぞれの性格を知ったり、好き嫌いに気づいたり、どのくらいの量を食べるのかを確認する時期でもあります。

といっても、私の光らせている目が「なんか、ものすごく見張られている気がする…」的にプレッシャーを与えてしまうといけないので、あくまでそっと、さりげなく、を心掛けます(笑)。

 

「そんなに山盛りにご飯をよそうんだ」

「嫌いなものは先に食べちゃうタイプなのね」

「トマトはどうしても無理なんだー」

「もしや、君はマヨラーなのか?」

 

 食事中の姿から知ることもありますし、食事が終わって洗い場に出されたお皿を見て気づくこともたくさんあります。と言っても、新入生というのは、新しい住処で他人が作る『家ご飯』が珍しいのか、こちらに気を遣っているのか、とにかく食べる、食べる。

もちろん、中には苦手な食材もあるはずですが、この時期は特に、私たちへの気兼ねもあってか自宅にいる時のように「これは嫌いだから、食べたくない!」と突っぱねることはできないのでしょう。
あるいは、私からの暗黙の「残すなよ!」圧を感じているのか(笑)、不平不満を口にするでもなく、ほとんどの選手が、見ていて気持ちいいくらいあっという間に山盛りのご飯を平らげていきます。

つまり、好き嫌いに気づくのは実はもう少しあとになってから。環境にも慣れて、少しわがままを言えるようになってからのことが多いです。
 

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 そんなふうに、てんやわんやの毎日でも、たまに、ふと私に時間的な余裕が生まれた時には、「食べたいものがあったらホワイトボードに書いておいて!」とリクエストを受け付けることもあります。

いや…正直に言えば、普段も意外と余裕はありますが、寮生活ともなると選手の人数が多すぎてリクエストを聞き始めたらキリがなくなるため、忙しいフリで煙に巻きます(笑)。
でも、たまには自宅でお母さんに「これを食べたい!」と甘えていたように、欲のままに食べたい日もあるだろうなと滅多に顔を出さない私の中の天使を登場させるというわけです。

それによって、会話のきっかけにもなるし、彼らの素顔を知ることもできるので一石二鳥です。

 

リクエスト人気が圧倒的に高いのは『からあげ』。
スポーツ選手である彼らにはカロリーを考慮して、普段は揚げ物をあまり出さないようにしていますが、この時ばかりは全力で応えてやろうじゃないか!と揚げに揚げまくります。キッチンの床が油でギドギド、ツルツルになってもしっかり両足を踏ん張って、揚げまくります。

しかも…これは『からあげ』に限らずですが…お皿を選手に手渡した時に「うわ、うまそ〜!」って言葉を引き出したくて、どんなに忙しくてもお料理はいつも湯気が立つほどの揚げたて、アツアツの状態で出すのが私の流儀。

そうすれば立体的なサラダの隣に並んで輝く『からあげ』に負けないくらいの、輝く選手たちの表情が楽しめるからです。そんな彼らを見ながら、密かに「よし、今日は10人のうまそ〜!を引き出せた!」とテカテカにおでこを光らせて、仁王立ちを決め込むのでした。

 

ー村野明子さんの思ひでレシピ

 

カラフルタルタル唐揚げ
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何百回と、揚げて揚げまくってきた"からあげ"。
そのままで食べるのももちろん美味しいのですが、たまにはアレンジも。
ブラックペッパー入りベビーチーズが、タルタルソースのアクセントに。
卵にマヨネーズを絡ませて時間を置くと緩くなってしまうので、食べる直前にタルタルは、作るのがベスト。むね肉なので、あまり長く揚げずに4分以内で引き上げて、余熱でふっくら仕上げます。

詳細レシピはこちら▼
レシピ詳細 | カラフルタルタル唐揚げ | Rokko Butter Co.,Ltd. (qbb.co.jp)

 

【管理栄養士・柴田麗さんからのアドバイス】

●揚げ物

習慣的に運動に取り組むジュニア世代は、カラダが小さくても大人より多くのエネルギー量を必要とする時期がありますが、1度に多くの量を食べられないジュニア世代もいることでしょう。そんな時に、脂質は効率のよいエネルギー補給源。試合の前日・当日を除いた献立に取り入れ、成長に必要なエネルギー源を確保していきましょう。

●鶏肉について
鶏肉には、良質なたんぱく質が豊富に含まれており、成長期のカラダづくり(筋肉、骨、血液、肌、爪、髪など)に欠かせないたんぱく源として活用できます。部位によっては、皮を除くことで低脂質になり、目的に応じた使い方ができる食材です(参考:鶏むね肉100gあたり /皮つき:191kcal、皮なし:108kcal)。

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