スポーツ料理研究家・村野明子さんの思ひでごはん~初心に立ち返る11月。皆さん、牡蠣の季節です!~

2023.11.28

毎年、11月になると思い出すのが、今の仕事を始めるきっかけになった、北海道コンサドーレ札幌での寮母1年目の出来事です。

 寮母といっても、当時はまだ寮がなかったため、04年に新川の自宅で『新川食堂』を始め、主にトップチームの若手選手や独身の選手、12〜13人向けに食事を提供していました。当時は栄養に関する知識もまだまだ乏しく、ましてや私自身がスポーツの世界とは縁遠い人生だったこともあり、アスリートの皆さんの体やコンディションのことを考えるというよりは、ただただ「美味しいものをお腹いっぱい食べてサッカーを頑張って欲しい!」という一心で料理と向き合っていました。

 そんなふうに食事の提供を始めて半年が過ぎた11月30日。夜遅くになって二人の選手が訪ねてきました。珍しい時間だったこともあり「どうしたの?! 忘れ物でもしちゃった?」と言いながら呑気に彼らを招き入れたのを覚えています。すると、神妙な面持ちで食堂の椅子に座った二人は「いや、そうじゃなくって」と話を切り出しました。

「実は、今シーズン限りで札幌を契約満了になったので、来シーズンはここで食事をいただくことができなくなったんです。なので、今日はお世話になったお礼とご挨拶に伺いました」

正直、衝撃でした。

「何?! それどういうこと?!」

あまりの驚きに、動揺を隠しきれずに口走ったのを覚えています。

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 先にも書いた通り、当時の私はスポーツの世界にかなり疎く…ましてやプロサッカー界のことや、それにまつわる契約のあれこれについても皆無といってもいいほど知りませんでした。それもあって、昨日まで札幌でプレーしていた選手が、明日からいなくなる事実を受け止めきれなかったんだと思います。今の自分なら、彼らの言う『契約満了』や『移籍』が、決してネガティブなこととは限らず、例えば、今より強いチームに移籍することにつながるとか、選手自身が理想とする戦術のもとでプレーできるといったポジティブな側面もあるとわかりますが、当時の私は、ただただ、絶望の淵に突き落とされたように、虚無感でいっぱいになっていました。

 同時に、自分の力不足をすごく反省しました。スポーツ界やサッカー界について無知なのをいいことに、私は彼らをサポートできなかったんじゃないか、もっとできたことがあったんじゃないかと自問自答し、すごく悲しい気持ちにもなりました。もちろん、自分が作る料理は、責任を持って提供していました。でも、どことなく家に遊びに来てくれた友達に美味しい料理を振る舞うことの延長で仕事をしていた気もして…。

 そういった自分の至らなさ、物足りなさにすごく落ち込んで「来年はもっと頑張らないと、また同じように選手がいなくなってしまう」と反省した記憶もあります。そういえば当時、めちゃめちゃ流行っていた平井堅さんの曲の歌詞を…それが当時の自分の心情にマッチしていたこともあって、ひたすらノートに書き写しては、気持ちを落ち着けていたのもいい思い出です。

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 と、なんだかメランコリックな文章になってしまいましたが、言いたかったのは、私にとっての11月が、過去の経験をもとに自分が居住まいを正すというか、当時の気持ちを思い出して初心に返るという意味で、とても大事な月になっているということです。あれから、20年近くもこの仕事に携わっているのは予想外でしたが、今の自分があるのは、あの時の経験があったからこそだとも思います。とか言いつつ、いまだに至らないことも多く、失敗だらけの毎日ですが、それらもいつかは「あれもいい教訓だったなー」と笑える日が来るように、頑張らなければいけないなとも思っています。

 

 そんな11月のレシピは…あの時挨拶に来てくれた子が好物だった…となればうまく話が繋がりそうなものですが、残念ながらそうではなく(笑)、
「11月といえば牡蠣だ!」ということで牡蠣を使ったレシピを考えました。

 牡蠣は好き嫌いがはっきりと分かれるため、新川食堂時代は、選手に食べるかどうかを尋ね、食べたいと言った選手の分だけ、電子レンジで温めては出していました。しかも、蓋が空いたら醤油とバター、あるいはレモンを振りかけて殻ごと出すという『海の男』気取りのダイナミックさ! ですが、最近は牡蠣を入れたお好み焼きを作ることもありますし、今回のレシピで紹介したように、牡蠣やカボチャ、ベーコン、ほうれん草を入れてキッシュにするなど、小洒落たものを作れるようになりました(笑)。

 ちなみに、フライパンでバター醤油をふりかけて牡蠣を焼き、身だけを取り出して炊飯器の中で炊きたてのご飯と合わせ、紫蘇を散らしていただく『牡蠣ごはん』は私の大好物。牡蠣のキッシュも、おつまみベビーチーズがすごくいい味を出してくれていますが、そもそも牡蠣はチーズとの相性が◎なので、牡蠣ごはんに入れるのもオススメです。

ー村野明子さんの思ひでレシピ

牡蠣のチーズキッシュ1245.jpgきのこを使わなくても、きのこが入ってるかのような薫りを味わえます。
かぼちゃの甘さと食感が、ポルチーニ薫る燻製ベーコン入りチーズと
                相性バツグン!

詳しいレシピはこちら▼
レシピ詳細 | 牡蠣のチーズキッシュ | Rokko Butter Co.,Ltd. (qbb.co.jp)

 

<柴田麗/管理栄養士からのアドバイス>

●ミネラルが豊富な牡蠣。

牡蠣は、”海のミルク”と呼ばれるほど、ミネラルが多く含まれています。特に亜鉛は、むき身1個(約20g)で約2.8mg摂取することができます。(18~29歳・成人女性の亜鉛の1日の推奨量:8mg/ 厚生労働省日本人の食事摂取基準202年版)亜鉛は様々な代謝機能に関係しており、味覚を正常に保つためにも重要な栄養素です。

 

●食欲の秋を利用して、食事量の回復を。

記録的な暑さで今夏は食欲がなかったという方も多いのではないでしょうか。栄養価が高いと言われる旬の物と同様に、私達の食事摂取量にも季節変動があり、一般的には夏場に減少し、秋には戻る傾向があるようです。食欲の秋を利用して夏に減少した食事量を戻し、スポーツの秋との組み合わせで、健康づくりに生かしていきましょう。

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