スポーツ料理研究家・村野明子さんの思ひでごはん~カレーって百万力~
2023.09.27
残暑厳しい毎日が続いていますが、あっという間に9月に突入しました。
夏休みを利用したハードなトレーニングや試合を乗り越えてきたこの時期の子どもたちには、毎年、どことなく逞しさが備わったような、少し大人になったような、そんな嬉しい成長を感じていたのを思い出します。真っ黒に日焼けして精悍さを増した顔も、なんだかとても眩しかったです。
もっとも、そんな彼らも怪談話の前では、ただの子供(笑)。
この時期、テレビではよく怪談番組が放送されていたこともあり、土日は決まって電気を消した真っ暗闇のリビングに集まって、怪談話に背筋を凍らせたり、怪談ドラマを観て叫びまくるというのが寮の風物詩の1つでした。
にしても、これがまた分かりやすくビビる、ビビる。
怖いなら見なければいいのに「やめてくれ〜!」だの「テレビを消せ〜!」など言いながら両手で顔を覆い、でも怖いもの見たさで指の隙間から覗き見ている彼らの姿を私たちスタッフはキッチンで翌日の食事の仕込みをしながら微笑ましく見守ったものです。
そして、そろそろ一番ヒヤッとしそうな場面だな、というタイミングを見計らって、大袈裟に床に鍋を落とす、あるいは火鍋を叩いて大きな音を出して驚かせる、という演出も欠かさずやっていました(笑)。これがまた見事なまでに彼らの悲鳴を大きくしていたのも懐かしく、昨日のことのように蘇ります。
翌日の仕込み、と書きましたが、寮母をしていた際は基本、料理は当日に冷蔵庫にどんな食材があるのかを見てメニューを決めることがほとんどでした。ただし、煮込み料理や「2日目が美味しい説」の料理はよく前日から張り切って仕込みました。
その1つがカレーです。
その昔、テレビCMの「夏だ! カレーだ!」というフレーズに感化されまくったせいか、暑い時期には決まってカレーを食べたくなる私ですが、それは今の時代の子供たちも変わらないようで…。
この季節は週に一度は必ず誰かから「カレーを食べたい!」とリクエストされることから、試合を終えた土曜の夜のためにと、金曜日の夜はよくカレーを煮込んでいました。
しかもカレーは、意外と作る手間はかからないのに、誰もがすごく喜んでくれるという百万力メニュー。大きなお鍋でいろんな具材を入れて煮込むカレーは、そして、大人数で汗をかきながら食べるカレーは、家で食べるそれともまた違う美味しさがあるから不思議です。
ちなみに、私の定番カレーはスペアリブなど骨つきの牛肉やスジ肉などをじっくり煮込むのが基本。
お野菜はその時々で冷蔵庫にあるものを使うので、いわゆるカレー定番のじゃがいも、にんじん、玉ねぎに限らず、大根をはじめ、とうもろこしやトマト、ズッキーニが入っていることもありますし、今の季節であれば、茄子を入れることも。隠し味はオイスターソースやナンプラー。味がぐっと引き締まって、奥行きと「ただのカレーじゃない」感が高まります。
今の仕事を始めてからはアスリート向けに「グルテンフリーのカレー」のオーダーを受けることが増えたので、最近はそれもよく作ります。グルテンフリーの場合、カレーっぽいとろみを出すために片栗粉などを使う人も多いと聞きますが、私はカレースパイスに牛乳やヨーグルト、塩麹を加えてとろみを出したり、マッシュポテトの粉を使ったりもします。もっとも私自身は、グルテンフリーカレーより普通のカレーが好きなので、自分が食べるのはほぼ前者ですが(笑)。
しかもカレーのいいところは、余ってもいろんな料理に使いまわせること!
嬉しいことに、子供たちに提供する際は、みんなが「カレーが余ってるよ〜!」の合図で、ホイホイおかわりしてくれるので、まず残ることはなかったですが、家で作って余った時には翌朝、食パンにカレーとチーズを乗せてトースターで焼くこともあれば、ご飯にカレーとチーズを乗せてオーブンで焼いた『焼きカレードリア』にすることもあります。
中でも一番のお気に入りは、今回のレシピでも紹介した『ポテサラカレー』。
なぜか私には、カレーを作る日は決まってポテトサラダを添えるという癖があり (笑)…その結果、思いついた料理ですが、これがまた美味しい!
ポテトサラダにカレーをかけ、シュレッドチーズを乗せるだけの簡単メニューなのに、余ったカレーやポテトサラダは一石二鳥でなくなるし、簡単に味変もできるのでおススメです。
念のため、「カレーにはポテサラより、グリーンサラダだわ」という方のために簡単マッシュポテトの作り方を。
じゃがいもをレンジで4分ほど温めて柔らかくしてマッシュし、熱いうちに牛乳と混ぜて塩・コショウとマヨネーズで味を整えれば、あっという間に完成です。出来立てマッシュポテトと、熱々のカレーの上で、シュレッドチーズがとろ〜り溶けて、絶妙なハーモニーを楽しめます。
ー村野明子さんの思ひでレシピ
詳しいレシピはこちら▼
レシピ詳細 | ポテサラカレー | Rokko Butter Co.,Ltd. (qbb.co.jp)
<柴田麗/管理栄養士からのアドバイス>
●具材によって栄養もいろいろ。
カレーは、ごはん、肉(シーフードも)、野菜が主な材料。そのため、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルが1皿で摂取できます。同じカレーでも肉の種類によって、牛肉(赤身)なら鉄、豚肉ならビタミンB₁、鶏肉は低脂肪(皮無し)というように栄養的な特徴は異なるので目的に応じて具材にバリエーションをもたせると良いですね。また、カレーに含まれるスパイスは消化管を刺激し、食欲の増進や消化の促進につながります。
●グルテンフリーを摂り入れるなら。
アスリートにおける調査研究では、現時点でグルテンフリーの実施がパフォーマンス向上につながると断言できるほどの結論は出ていません。またグルテンフリー食は食物繊維やビタミン、ミネラルが不足しているとも言われています。もし、摂り入れるのであれば、栄養の不足がないように、専門家のアドバイスを受けながら進めることが望ましいです。