スポーツ料理研究家・村野明子さんの思ひでごはん~胸踊る、ポターーージュ。~

2024.11.1

ポタージュ。

どことなく優雅で、高級感のあるそのワードに、スープとはまた違った、とんでもない美味しさを連想してしまう人は多いのではないでしょうか。

 事実、「今日はポタージュを作るよ!」と宣言すると決まって、子どもたちに「え?! 手作りで?!」と驚かれるのも、ポタージュという言葉の先にスペシャルな味を想像しているからなのかな、と。正直、料理を提供する側としては「いやいや、どの料理も手作りだよ!」とツッコみたくなるところですが(笑)、どうもポタージュや手作りお菓子、というワードは子どもたちを…特に男の子たちを胸躍らせる、特別な魅力を備えている気がします。

 

 しかも作り方は、至って簡単。今回の『ごぼうときのこチーズポタージュスープ』も、みじん切りにしたごぼう、舞茸、玉ねぎをバターで香りが出るまで炒めて牛乳とコンソメと一緒にミキサーにかけ、なめらかになるまで攪拌したら、その時点で8割方出来上がっています。あとはそれを小鍋に移し、レンジ用ふぉんじゅ亭を入れて火にかけて温めるだけ。仕上げにみじん切りにしたレッドオニオン、刻んだパセリ、ブラックペッパーを散らせたら出来上がりです。野菜が備える甘み次第で、少し味に違いが出るので、小鍋で温める際に味見をし、砂糖やハチミツ、塩で味を整えると、より理想の味に近づくことでしょう。

 特にポタージュやスープにおいて『甘さと塩っぱさのバランス』は美味しさを引き立てる、とても大事な要素である気がしています。使用する野菜や、それを予め炒めるなどの手間の掛け方によって、甘さの出方が変わってくるからです。今回は旬を迎えているごぼうと舞茸、玉ねぎを使いましたが、その野菜がかぼちゃやとうもろこし、玉ねぎなど甘味が強い野菜なら塩で整えた方が締まるなとか、逆にごぼうやほうれん草、小松菜のように少し尖った味になりそうな野菜には、砂糖やハチミツで甘さを足した方がいいな、とか。自分なりの味の落とし所を想像しながらほんの少し味を整えるだけで、驚くほど美味しく仕上がります。もちろん、野菜の旨味だけに頼らず、火にかける際にベーコンや生クリームを入れるとより、味に深みも出てきます。

 考えてみれば、私がポタージュを頻繁に作るようになったのは、ミキサーやジューサー、ブレンダー、フードプロセッサーやスライサーといった便利な調理道具たちを使い始めてからでした。北海道コンサドーレ札幌の寮母をしていた時代は、そこまで食事を提供する選手の数が多くなかったこともあり、野菜を切る作業があまり得意じゃない私でもなんとか誤魔化せていましたが、ヴィッセル神戸の寮母に就任し、それまでの2〜3倍もの選手たちに食事を提供するようになった頃からそうはいかなくなり…。「1つずつ、食材を包丁で切っていたら追いつかないぞ!」と、必要に迫られてスライサーを使ってみたところ、その優秀さに魅了されたのがきっかけです。

以来、ほんの少量の野菜をカットする時ですらスライサーに頼るようになり、その手間が省ける分、他に力を割けるようになって、料理の幅が一気に広がりました。しかも、それに加えてミキサー、ジューサー、ブレンダー、フードプロセッサーという最強アイテムを使うようになったら料理がはかどる、はかどる! 自分が一番面倒に思っていた食材をカットするというストレスからも解放され、切った野菜の不揃いぶりに落ち込むこともなくなりました。

何より、ジューサーやミキサーたちは今回のポタージュのようにドロっと感を出したい時や、繊細に食材の食感を残したい時にとてもいいアシストをしてくれます。おかげで、自分でもびっくりするほど未だにカット技術は上達していませんが、文明の利器たちに助けられ、なんなら料理の腕を上げたんじゃないか、的な気分にもなれています。もちろん、何かを上達するためには時に努力も必要だと思っていますが、料理に関して言えばそこに労力を割いて疲れちゃうくらいなら、世に溢れる便利なグッズたちに頼るのもアリかと。毎日のことだからこそ、料理に嫌気がささないことも大事だからです。

 まして、冒頭にも書いた通り、ポタージュは子供たちにとってどことなく気持ちを上げてくれる料理です。またポタージュにすることで野菜の旨味、栄養素を逃さずにいただけますし、体調を崩している時や夏場で食欲がない時なども喉を通りやすいという利点もあります。そんな万能な料理を、こんなに手軽に作れるのなら便利グッズを使わない手はありません。

 そう言えば、ポタージュはドロっとした重みがある分、麺にも絡みやすいため、つけ麺のつゆがわりにも使えます。ただし、そのままだとどことなくミスマッチ感が否めないため、例えばそうめんなど和食のつけ麺に使うなら白だしを入れるとか、パスタに合わせるならコンソメを足してみるとか、料理のテイストに近い調味料を加えることで何となくマッチする味に近づきます。ちなみに、私のつけ麺用おすすめポタージュはトマトをミキサーで撹拌し、レンジ用ふぉんじゅ亭とコンソメを合わせたトマトチーズポタージュ。カッペリーニともよく合います。

ー村野明子さんの思ひでレシピ

ゴボウとキノコのチーズポタージュチーズフォンデュをポタージュに入れることで、コクを出しながらからだが芯まで温まるメニューになります。

詳しいレシピはこちら▼
レシピ詳細 | ゴボウとキノコのチーズポタージュ | Rokko Butter Co.,Ltd.

<柴田麗/管理栄養士からのアドバイス>

●ごぼうは食物繊維が豊富。

ごぼうの主要な栄養素のひとつ、食物繊維は整腸作用や、血糖値の急上昇を抑制するなどの働きがあります。ただし、アスリートは試合前、緊張から胃腸の消化吸収能力が低下することがあるため、食物繊維を摂り過ぎると消化不良を起こし、ガスが溜まって不快感につながりやすくなります。試合前は食物繊維が多い食品を避けることが望ましいでしょう。

 

●時間がない時は市販品も上手に活用しましょう。

野菜ジュースやスムージーは食欲がない時、外食が続いて野菜量が不足しがちな時に活用しやすいです。様々な野菜や果物を一度に摂ることができるので、時間がないときの助けにもなります。最近は市販品でもビタミンやミネラルが強化されている商品もありますので、食生活に合わせて上手に活用していきましょう。

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