スポーツ料理研究家・村野明子さんの思ひでごはん~師走の思い出。体も心も温まるお鍋。~

2023.12.8

気がつけば師走。


「1年が終わるのが早すぎやしないか?」と思いながら「今年の納会はどうしようかなー」なんて考え始めています。

 思えば、寮母をしていた時の寮の納会は、年末恒例の一大イベントでした。この日ばかりは私たちスタッフも「楽をさせてもらいます!」と宣言。料理はすべて近所の中華料理屋などにデリバリーをお願いし、食器類も後片づけが楽なようにと紙皿、紙コップを使っていました。参加してくださる方たちの誰もが気遣いすることなく、ただただ楽しめる1日にしたい! というのが狙いでした。

 そんな納会の最大の目玉は「一人、1000円以上」という条件付きのプレゼント交換でした。始めた当初は上限を決めていた気がしますが、いつの間にか時折、サプライズで飛び入り参加してくれるトップチームの選手が目玉になる素敵なプレゼントを用意してくれるという習慣が生まれ(←え? 無理やり?)、これはいいぞと味をしめ(←きっと暗黙の圧をかけていたはず)、こっそり「1000円以上」というアバウトな表現に変えました(←気づかれていませんように!)。

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 プレゼント交換は、集まったプレゼントに番号を割り振り、適当にその番号を引いていくというオーソドックスな方法でしたが、これがまた盛り上がる! 自分では絶対に買わないような筋肉をほぐす豪華マッサージマシンが当たっては大騒ぎし、女の子が好きそうなファンシーなアイテムを当ててしまって爆笑し、それを身につけてさらに笑いを誘う、というように、何がそんなにおかしいのかわからなくなるほどみんなが笑顔になっていました。

 それが終われば、カラオケ大会が始まります。寮が近所迷惑を考えなくて済むような、周りに何も建っていない場所にあったのをいいことに、レンタルしてきたカラオケ機器をフル稼働して、マイクの奪い合いに。そして締めはみんな大好き一発芸大会。年を重ねるほど、並々ならぬ意気込みで芸を仕込んでくる猛者もいて、サッカーよりそっちの道に進んでもいいんじゃないか、って思うほどのクオリティを目の当たりにしたこともありました。

 この日だけは消灯時間が決められていなかったため、夜通し楽しんでいる選手もいましたが、体力のない私たちスタッフは、若い彼らの夜ふかしには付き合いきれず、早々に退散。朝の5時過ぎに「流石にもう寝たかな」と思ってリビングルームに顔を出したところ、枯れ果てた喉で、みんなを起こさないようにと囁くような声で歌っている選手がいて驚いたこともありました(笑)。

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『12月=納会』を連想するように、料理では12月=鍋が定番でした。

基本的に、5〜6人で一鍋、というテーブルセッティングだったため、選手が揃う土・日・月曜日にしか提供できませんでしたが、寒い冬に仲間と囲む鍋はそれだけで特別感が漂い、各テーブルから立ちのぼる湯気も相まってなんだか食堂が温かい雰囲気に包まれたのを覚えています。

 基本的に、寮での鍋はテーブルごとに寄せ鍋なのか、海鮮鍋なのか、チゲ鍋、カレー鍋なのか、市販のお出汁を自由に選べるようにしていました。1テーブル分の人数が集まったら、何鍋をするのか話し合って決めてもらい、用意してある具材を好きな味で食べる、という感じの『鍋祭り』です(笑)。「うちの席はカレー鍋にします!」というグループもあれば、「今日はチゲ鍋で勝負!」というグループもいて、たまに隣の席から漂う匂いに誘われて、席替えを願い出ている選手もいました。

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 一見、いろんな鍋を作っているようにも見えますが、鍋の場合、使う野菜類はほぼ同じだし、私たちスタッフの準備も具材をカットするだけという手軽さなので、全グループが違う鍋を食べたとしても、手間は掛かりません。しかも普段はあまり野菜が好きじゃない選手も、鍋ならたくさん食べられるというのも魅力の1つ。そろそろ賞味期限を迎えそうな食材もそっと置いておけば、一緒に鍋に入れてくれるので、フードロスをなくす意味でも大助かりでした。

 何より、普段なら30分ほどで終わる食事に1時間以上かけて、同じ鍋を囲んでいるのもとても楽しそうでした。スポーツ界ではよく「同じ釜の飯を食べた仲間だから」という表現をしますが、まさに鍋もチームの結束を強めるにはもってこいの一品。時に鍋の肉を取り合い、譲り合い、「美味しいなー」と語らいあう時間を通じて、いつもよりコミュニケーションが増えるのもお鍋の魅力だと思っています。

 

 今回レシピで紹介した『牛肉とトマトのチーズ鍋』は、先に挙げた鍋たちとは趣向が違うため、『鍋祭り』のレパートリーに入ることはほぼなかったですが、体の芯まで冷え切ってしまうような寒さが厳しい日に、「熱々の料理で温まってほしい」との思いから提供していた一品でした。生姜は体を温めてくれる食材の一つですし、牛肉や舞茸はもちろん、チーズとの相性も抜群。スキレットの中で程よく溶けた『レンジ用チーズふぉんじゅ亭』とみじん切りにしたトマトとパセリの風味も相まって、あっという間にお鍋の底が見えてきます。ふうふう言いながら食べ終わった頃にはじんわり汗が浮かんでくるくらい、体が温まるのも嬉しいポイント。ご自宅にスキレットがなければ小鍋で代用を!

ー村野明子さんの思ひでレシピ

牛肉とトマトのチーズ鍋

1142_牛肉とトマトのチーズ鍋_村野_202112.jpg熱々のチーズフォンデュの上にフレッシュトマトをのせて、うま味たっぷりで
最後まで美味しく召し上がれる相性抜群の組み合わせです。

詳しいレシピはこちら▼
レシピ詳細 | 牛肉とトマトのチーズ鍋 | Rokko Butter Co.,Ltd. (qbb.co.jp)

<柴田麗/管理栄養士からのアドバイス>

●トマトは加熱することで吸収率アップ!

トマトに含まれる赤い色素『リコピン』は、高い抗酸化作用があり、活性酸素を除去する働きをします。リコピンは、加熱をすることによって、あるいは朝の時間帯に摂取することで体内への吸収率が高まることがわかっています。リコピンの抗酸化作用を最大限期待する場合には、摂り方や摂取のタイミングを考えてみるといいでしょう。 

●生姜には消化を促したり食欲を刺激する作用も。

生姜は、ジンゲオールやショウガオールなど独特な辛み成分を含んでいます。これらは、抹消神経の血流循環を促し、身体を温める作用があると言われています。また、消化を促したり、食欲を刺激するといった作用も期待されていますが、大量に摂取すると胸やけや腹部の不快感、下痢などにつながる可能性がありますので気をつけましょう。

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